梅花に秘めた恋心 紀友則の歌

梅の花がひらくと、いつも口ずさむ和歌があります。

「梅の花を折りて人におくりける」という詞書きのある紀友則の歌です。

きみならで誰にか見せん 梅の花 色をも香をも知る人ぞ知る

・・・貴女以外の、いったい誰に見せようというのでしょう。

厳寒のなかで高貴な香りを放ちながら開く梅の花は、春の訪れを知らせてくれます。
今のように暖房などない時代には、どんなにか春が待たれたか知れません。
また、その香にも、現代人の何倍も敏感だったことと思います。

咲き始めた梅の花を目に、心が浮き立つような喜びを覚え、
「ああ、そうだ、あのひとへ」と、愛しいひとを想い出す。
春の訪れを伝えたくて、つい、梅の枝を折り取ってしまった。

でも・・・もしかしたら、片思い?あるいは、禁じられた恋だったのでしょうか?

「色をも香をも知る人ぞ知る」

わたしには、折り取ってしまった梅の枝を手に、なかば呆然と立ちすくむ貴公子の姿が目に浮かぶのです。

かの人への恋心は「知る人ぞ知る」、つまり誰にも言えない、気づかれてもいけない、秘められたもの。

もし、この梅の枝を持って行ったりしたら、もはや秘め続けることはできなくなってしまう。

伝えたいのに、伝えられない切ない想い。

実は今でも、こういうことはあるのでしょう。

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梅花に秘めた恋心 紀友則の歌” に対して1件のコメントがあります。

  1. 匿名 より:

    小野泉です。私も梅の花の和歌や桜の和歌は好きなものが多いです。梅が咲いたらメジロが遊びにくるでしょうね。でも最近梅の木も随分少なくなったように思います。梅の花ならきっと秘めた気持ちを聴いてくれますね。優しい、優しい気持ちで。

  2. mariko より:

    泉さん、コメントありがとうございます。幼い頃過ごした家の中庭に梅の木があって、ちょうど祖母の居間から障子越しに眺めることが出来ました。梅の花は祖母との思い出の花でもあります。子どもの頃はあまり好きではなかったのですが、人生経験を積むほどに好きになりました。一年で最も寒い時期に果敢に咲く梅の花に、どれだけ慰められたか知れません。今年は開花が早いので、あちこちの梅園で見頃を迎えているようですね。

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