いろんな方々に支えられた『言の葉帖』

2016年2月に限定出版した『心をたがやす言の葉帖』という新書サイズの語録本があります。サービスブックとして位置づけ、『女子の武士道』(致知出版社)をはじめとする代表作から引用するだけでなく、『星の王子様』(サン・テグジュペリ)や『茶の本』(岡倉覚三)など、私の愛読書である古今の名著から好きな言葉を選びました。
そして、それらと連動するかたちで現代詩や一言エッセイを書き下ろし編纂したのです。
もともと広告や雑誌の仕事から入り、出版プロデュースも手がけていたので、企画・編集・執筆と絵コンテやページネーションは得意なんです。あとはデザイナー次第ということになるのですが、十年来、一緒に仕事をしてきたナガサワさん(長澤伸)とのコンビでしたから、あうんの呼吸、ツーカーで実に楽しく制作しました。
完成した本は、明正堂上野アトレさんで入り口のすぐ近くと(トップの画像です)、以下の写真のように【話題の本】というコーナーで『女子の武士道』『女子の教養』と並べて、なんと2カ所で展開してくださいました。

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また、元祖・本のソムリエとして有名な清水克衛さんのお店【読書のすすめ】でも山積みしていただきました。

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本屋さんだけでなく、ある美容師さんが「ぜひうちの店で!」と販売してくださったりもしました。とても徳のある美容師さんで女性のお客さまから悩みを相談されているのです。そんな経験から「支えになる本」を紹介することも少なくないのだとか。
「いい女になれる言葉に出逢える一冊!」というキャッチコピーまで入れてディスプレイしてくださいました。
あとは、ちょうど発売の頃の講演で参加者への特典にしてくださり、200冊あまりが一日で完売したこともありました。
何やら自慢話のようで甚だ恐縮ですが、創作するばかりで営業販売にはまったく無力な私に多くの方々が手をさしのべてくださった・・・というのが実際のところなのです。
ともあれ、こうして『言葉をたがやす言の葉帖』は限定品だったこともあり、思いがけず早々になくなってしまいました。
重版を進められもしましたが、やはり限定品として制作したのだし、思うところもいろいろあってやめました。

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読者からの問い合わせによってAmazonで倍以上の価格がついていることに気づく

それが今年になって問い合わせがたびたびあり、その都度、
「申し訳ないのですがAmazonでユーズドで販売されているのを主止めていただきたいのです」とお詫びしました。1000円(+税)で販売していたのだから、せいぜい300円程度で入手できるだろうと思っていたのです。
けれど、念のため調べて見たところ、なんと倍以上の価格になっていました。新品とか新品同様だと約4倍です。
以下は12月30日12:23時点での販売価格をスクリーンショットしました。
これはさすがに「Amazonで古書を買ってください」などとはいえません・・・。

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まずは電子本でリニューアル。キーワードその1「ぬくもりのあるクラフト感」

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そこで、リニューアル版を急ぎ制作しよう!と、ナガサワさんに連絡しました。
「作るよ-」(わたし)
「いいよー」(ナガサワ)
こんな感じです。
そのくせどうでもいいことをゲラゲラ笑いながら話して、気づいたら2時間とか経っているのだから私たちはどれだけヒマなのか?と思います(忙しいとかいいながら)。
もっとも、この無駄話がいいんだな。
無駄話をしながら、「で、こういうふうにしたいんだよね」と、どんどんアイディアを出しながらまとまっていきます。
そのようにして大枠を決めて、あとは走りながら(作りながら)です。

リニューアル版は電子本と紙の本と両方あります。
が、電子と紙では、けっこう違うものとなります。
電子には電子にしかできないことがあり、紙には紙にしかない魅力があるので、両者の特性をそれぞれ際立たせるとしたら、結果的に「ちがうもの」に成らざるを得ないのです。もちろん、文章(内容)はそのままですが。
今回は、まず電子本を出して、その後、紙の本を制作することにしました。
そして、いつものことですがせっかくだから、思いっきり遊ぶことにしました。特に電子本はコストのことをあまり考えずにいろんなことができるので、作っていて楽しいです。

電子本を製作するうえで最も大切にしようとしているのは、元祖『言の葉帖』の風合いを出来るだけ活かすということです。
このカバーデザインは、まず私がラフを描いて、ナガサワさんがそれをもとに何倍も何十倍も素敵なデザインに仕上げてくれました。
帯をつけた状態がこちらです。
お気づきでしょうか。著者名を表紙に出していません。
デザインを最優先するためで、これは他の書籍で見たことないです。

後ろ側です。帯には収録した一編の詩を掲載しました。
どういう内容か、なんとなく雰囲気を掴んでもらうために。

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帯を取り外したときに、「ハッとして欲しいな」という企みから、富士山のイラストが出てきます。これはナガサワさんが描いてくれました。
『女子の武士道』のイメージが強いので、あんまり「和風!!」にならないように気をつけ、でも、日本の素敵さが感じられるようにしました。

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カバーも帯も外すと、本の本体表紙に金箔の日の丸と富士山が出てきます。
これは、実は箔押ではないのです。限りなくそう見えるように、実に細かい工夫をしてくれました。デザイナーの実力がものをいいます。

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私はもともと紙の本が好きなので、電子本のつるっとした感じには、なかなかなじめません。
そこを、デザインと書体でなんとかできないか?!と考えました。
つまり電子本にクラフト感のエッセンスをプラスするのです。
そうすれば、もしかしたら電子本になれた若い世代にとっては新鮮かも知れないし、私のように紙の本が好きなオジサン・オバサン世代には抵抗感が少なくなるかも知れない。
そこでナガサワさんにこの本を見てもらいました。
デザイナーさんにデザイン的なことを伝えるときは「絵」で見せるのが一番早いんです。
北原白秋の叙情詩の復刻版です。
見てください、この紙の質感、インクの色、活版印刷の風合い!!(活版印刷ってわかりますか?)
タイトルは手書きのオリジナル書体ですね。
ああ、いいなぁ・・・・(感嘆)

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というわけで、とにかく今回のリニューアル版では、電子本でありながら、どこか「あったかい感じ」のするようなデザインと書体を目指しました。

キーワードその2「電子本にしかできない贅沢と様々な仕掛け」

電子本に紙の風合いを求めるなんて、どことなく後ろ向きに見えるかも知れませんが、制作しているうちに電子本、かなり好きになってきました!
というか、自分で作っている電子本が好き(笑

というのも、写真をかなりたくさん!しかもカラーで!挿入することができるからです。
紙の本は四色刷になると制作や印刷製本にかかるコストが跳ね上がります。今は昔ほどではなくても、やはりそれなりになってしまいます。
でも、電子本はそもそも印刷はしないので、考えなくてよくなります。
昔からフォトエッセイを出したいと思ってきたし、読者からのリクエストもあったので、今回はこれまで撮影したもののなかから、雰囲気のある写真をたくさん入れました。
もうひとつ、電子本のおもしろいところは、リンクを埋め込めることですね。これはかなりおもしろい拡がりを出すことができそうです。いろんな仕掛けをあちこちにしておきました!

販売スタートは2020年1月なかばを予定、ご期待ください!

というわけで、猫の手も借りたい年の瀬に電子本作りは大詰めとなっています。
ちなみにリニューアル版では、ロングセラーとなっている『女子の武士道』や『女子の教養』からの引用は割愛しました。
そのほか元祖版で引用したもので、リニューアル版には反映しなかったものはけっこうあります。
その代わりといっては何ですが、書き下ろしをかなり加えました。
さらに、本邦初公開!和歌も入れています。
ここだけの話、私は和歌を習ったことは一度もありません。ただ、古今集や新古今など大好きで、寝る前や疲れたときなどよく読みます。ですから、和歌のルールも何も無関係なまま、ただノリだけで詠んでいますので、どうぞご了承くださいますように・・・

ともあれ、一月なかばを目指して、ワクワクしながら制作中ですので、楽しみに待っていてくださいね!



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