夏着物に見る日本の心

誰もが涼を求める夏

さらりと、そしてきちんと着こなした夏の着物は
実に涼しげで
見る人に一服の涼をもたらします。

その秘密は、なんといっても
絽や紗の透け感にあります。

透けるといっても、
お洋服のシースルーと違って
上品なことこのうえありません。


夏の着物は「気」を入れて
暑さ対策も忘れずに

ただ、いくら涼しげでも
全身を覆うのですから、着ている本人は暑いのです。
少なくともタンクトップとショートパンツよりは
絶対に暑いですね。

それでも不思議なことに
「えい!」と着てしまうと、そんなに暑さを感じないのです。
少なくとも私の場合はそうです。
舞妓さんなどは、お胸の下あたりに
ぎゅっと紐を結ぶと汗が出にくい・・という智恵をお持ちだそうですが
私はそうしたこともせずに、普通に着付けます。

もしかしたら、意地っ張りな性格が功を奏しているのかもしれません。
武士は食わねど高楊枝、やせ我慢です。

着物を着るからには、ぜったいに涼しげに着こなしたい
間違っても暑そうな様子をしたくない
そういう意地が気合いになって
暑さを忘れる・・というよりは、「こんなものだ」と思えるのかも。

一方で、汗を抑えて、少しは涼しいようにという工夫もしています。

まず、夏用の長襦袢は、二部式の「嘘つき襦袢」を使っています。
これなら、一枚、下着を省略できますから、そのぶんだけ涼しいです。
また、着付けの前に、赤ちゃん用のパウダーを
お胸や脇など、気になるところに多めにはたきます。
こうしておくとべたべたしません。

今は化繊の着物もずいぶんよくなってきました。
割り切って夏は絹はやめて、化繊にしてしまうのもいいですね。

上の二枚の写真は、いずれも化繊なのです。

でも、きちんとした席では、やはり正絹です。

絹の透け感、上質な艶、やはり違います。

自分より相手を先んずる

暑いのに、あえて着る夏の着物。
それは、ひとえに涼を感じていただきたいからです。
つまり、自分よりも相手を先んじているわけですね。

これぞ日本の心、です。

日本精神として、いろいろ難しい話がありますが

夏の着物は、そんな難しいことは抜きにして

凝縮しているのです。

しかも、美しい。
いえ、だから、美しいのかもしれませんね。

夏の着物を着たときは
どんなに暑くても、まるでぜんぜん感じていないみたいに
涼しい顔、凜としたたたずまいでいることも大切ですね。

にっこりと涼しげに微笑みながら

「お暑うございますね」

と、ご挨拶できたら、もうすっかり淑女です。