生きてゆく私
昔、宇野千代さんの自伝的小説『生きてゆく私』がドラマ化されたことがありました。確か、十代後半の頃ではなかったかと記憶しています。
主人公を演じたのは十朱幸代さんで、「かっこいいなぁ!」と思ったものです。
もっとも、そのドラマの内容は忘れてしまいました。
ヒロインの人生が、実に波瀾万丈だったということだけは覚えているのですが・・・
意志が強くて、時代の先端にいて、それだけに周囲の人からは時として白い目で見られる。
男性遍歴も華々しく、そうなると、痛手や傷も半端ではない。
もっと平穏無事な生き方もあるだろうに、激しくしか生きられない人というのはいるものですね。
だけど、私もここまで生きてきて、さまざまな人とご縁をいただくなかで気づいたのは、平穏無事な生き方など、実はひとつもありはしない、ということです。
誰もが波乱に富んだ人生を生きている。
平凡で、平穏無事な人生など、ほとんど存在しない。
事実は小説より奇なり、という言葉がありますが、まったく人生とは、
すべての人にとって「ドラマチック」なのです。
ドラマ『生きていく私』で、強く印象に残っているシーンがあります。
悲しみにうちひしがれ、一時は取り乱しさえしたヒロインが、涙に暮れながらも立ち上がり、風に吹かれながら歩いて行くのです。
まっすぐに前を見据えながら、どんどん、どんどん、ひたすら歩いて行く。
最初は怒ったような顔をしていたのが不意に緩み、ほんの一瞬、少女のように頼りない表情が浮かぶのですが、それはさっとかき消され、次には頬笑みが立ち上がるのです。
そこに見えたのは、決意であり覚悟でした。
それでも私は生きてゆく
何があろうと生きてゆく
まさに、「生きてゆく私」です。
もしかしたら、このシーンは、私の中で勝手に作り上げてしまったものかもしれません。
けれど、ときおり、・・悲しいことがあったときなどは特に
この場面を想い出すのです。
それでも私は生きていく。
そして、
こうして、ますます輝いていく。
人は何度でも立ち上がれるもの。
そして、
人生は、前にしか進めないものなのですね。

ありがとうございます。そうですね。何もない人生なんてありませんよね。同感です
小野泉さん、コメントありがとうございます。本当に人生はさまざまですね。よく事故や病気で死の淵をさまよって、そこから生き方がかわった!とか、経営のどん底から這い上がった・・とか、そういう激動のストーリーが取りあげられますが、辛いことや悲しいこと、困難は、それぞれありますよね。その人の筋力に応じた困難が訪れているのかしら?などと考えたこともあります(笑
ともあれ、誰もが皆、一所懸命に生きているんだと思うと、人に対しても、自分に対しても、やさしくなれるような気がします。