16日は熱海MOA美術館にて『茶の本』の講話をします

12月16日(土)は 熱海のMOA美術館にて終日セミナーです。
20代という若い世代で、中には大学生の参加もあるそうです。
MOA美術館は、私のリクエストによります。
折しも仁清展が開催されていることから、
講話では、岡倉覚三の『茶の本』についてお話することにいたしました。
我が国の伝統文化を代表する茶の湯は、
仏教、とりわけ禅と深い関わりにあり、日本ならではの神仏習合の歴史の中で発展してきました。
なお、禅が入ってきた鎌倉時代から、武士が参禅するようになりましたが、それが武士に茶の湯が浸透していくことにもなりました。
それはとりもなおさず、武士道と茶の湯とが、切っても切り離せない関係になっていったことをも示します。
しかし、明治初期の神仏分離と、それに伴う廃仏毀釈、さらには行きすぎた欧化主義の嵐の中で、茶の湯と、茶の湯と共に発展してきた美術品(それは仏教美術でもある)が、ただ同然で海外に流出し、まさに失われようとしていました。
その流れに果敢に立ち向かい、強烈に抵抗し、さらには、西洋諸国に「茶の湯」を通じて日本の伝統と歴史、民族の精神性の素晴らしさを訴えた一人が岡倉覚三(天心)なのです。
『茶の本』は、単に茶道とは何かを語る「優雅な趣味の本」などではありません。
勇猛果敢な武人の精神を以て語られた、極めて挑戦的な書物なのです。
日本人は、海外の人々から少なからぬ敬意を払われています。
その理由に、長きにわたる歴史と、その歴史の中で培われた伝統・文化・芸術があげられます。
岡倉天心は、民族の誇りを守り抜いた先人の一人です。
私たち日本人にとって、恩人というべき人であるわけです。
*熱海MOA美術館公式サイト